不動産業界におすすめの電子契約サービス10選|比較ガイド
更新日 2026年01月16日
不動産取引の電子化が進み、賃貸借契約や売買契約、管理委託契約までオンラインで締結するケースが増えています。2022年の宅建業法改正により重要事項説明書や契約書の電磁的方法による交付が可能になったこともあり、不動産会社にとって電子契約サービスの導入は現実的な選択肢になりました。一方で、一般的な電子契約サービスと不動産特化型サービスが混在しており、自社の契約種別や業務フローに最適なサービスを見極めることが難しいという課題もあります。
本記事では、不動産業界向けの電子契約サービスの特徴と選び方を整理したうえで、賃貸・売買・管理などの契約業務に強い主要サービスを比較します。導入メリットや注意点、社内体制づくりのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
まずは、不動産業界におすすめの電子契約サービスを厳選し、ご紹介していきます。
PICKFORM 電子契約
株式会社PICK
出典:PICKFORM 電子契約 https://www.pick-form.com/
PICKFORMは、株式会社PICKが提供する不動産取引向けの電子契約・申込管理サービス。賃貸の入居申込から契約締結までをオンラインでつなぎ、店舗対応や書類回収の負担を減らします。
申込者情報や物件情報を一元管理できる点が特徴で、仲介会社・管理会社・入居者間のやり取りをスムーズに進められます。
また、PICKFORMでは、入居申込フォーム作成、本人確認書類の回収、審査状況の共有、電子契約の締結、進捗の可視化が可能。対応スピードを高め、ペーパーレス化と業務効率向上を同時に実現できます。
主な機能
- 契約書のアクセスコード設定機能
- タイムスタンプ機能
- 電子サイン機能(立会人型)
- 契約ステータスの管理機能
いえらぶサイン
株式会社いえらぶGROUP
出典:いえらぶサイン https://ielove-cloud.jp/service/sign/
いえらぶサインは、株式会社いえらぶGROUPが提供する不動産業界向け電子契約サービス。賃貸借契約や更新、解約関連書類などをオンラインで締結でき、来店対応や書類回収にかかる時間を削減します。
不動産実務に沿った画面設計と契約フローが特徴で、現行業務を大きく変えずに電子化を進めやすい点が強みです。
また、いえらぶサインでは、契約書テンプレート管理、署名依頼と進捗確認、契約書のクラウド保管、検索・共有が可能。繁忙期の事務作業を抑え、仲介・管理業務の効率化と顧客満足度向上につながります。
Release
GOGEN株式会社
出典:Release https://release.estate/
Release(レリーズ)は、GOGEN株式会社が提供する不動産分野に強い電子契約サービス。賃貸借契約や売買関連書類をオンラインで作成から締結、管理まで一貫して行え、契約書の散在や管理漏れを防ぎます。
物件や取引単位で契約情報を整理できる点が特徴で、複数案件を同時に扱う仲介会社や管理会社でも運用しやすい設計です。
Releaseでは、各種不動産契約書の電子署名、締結履歴の自動記録、権限設定による内部管理、契約書の一元管理が可能。契約業務の標準化を進め、引き継ぎや確認作業の負担軽減にも貢献します。
電子契約くん
イタンジ株式会社
出典:電子契約くん https://lp.itandibb.com/denshi-keiyaku/
電子契約くんは、株式会社サインタイムが提供する電子契約サービス。不動産会社が日常的に扱う賃貸借契約や更新契約、覚書などをオンラインで締結でき、紙書類の管理負担を軽減します。
機能を絞ったシンプルな設計が特徴で、電子契約の導入経験がない不動産会社でも現場に定着させやすい点が強みです。
また、電子契約くんでは、契約書のアップロード、署名依頼の送信、締結状況の確認、締結後の契約書保管と検索が可能。郵送や押印回収の往復を減らし、顧客対応のスピード向上と事務コスト削減を実現し、不動産業務の効率化を後押しします。
クラウドサイン
弁護士ドットコム株式会社
出典:クラウドサイン https://www.cloudsign.jp/
クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービス。不動産業界でも導入が進んでおり、賃貸借契約、媒介契約、管理委託契約、各種覚書など、契約書の締結から保管までをオンラインで完結できます。
法的有効性やセキュリティに配慮した運用設計が特徴で、紙の押印・郵送・回収に伴うタイムロスやコストを削減し、繁忙期の事務負担を抑えられます。
また、契約相手への署名依頼、締結状況のリアルタイム確認、リマインド送信、締結済み契約書の一元管理と検索が可能。店舗と顧客の来店調整を減らし、遠方のオーナーや法人契約にも対応しやすく、不動産契約業務のスピードと管理品質を高めます。
主な機能
- 契約書のアクセスコード設定機能
- 本人確認書類による認証
- タイムスタンプ機能
- ワークフロー機能
電子印鑑GMOサイン不動産DX
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
出典:電子印鑑GMOサイン不動産DX https://www.gmosign.com/
電子印鑑GMOサイン不動産DXは、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する不動産業界向け電子契約サービス。賃貸借契約や管理委託契約、各種覚書など、不動産取引で発生する多様な契約書類をオンラインで締結できます。
実務で求められる信頼性や証跡管理を意識した設計が特徴で、電子署名法や関連法令への配慮も行われています。
また、電子印鑑GMOサイン不動産DXでは、契約書への電子署名、締結履歴の管理、契約書の長期保管、オーナーや管理会社との共有が可能。押印・郵送・保管にかかる手間を減らし、契約業務の効率化と管理品質の向上を支援します。
BtoBプラットフォーム 契約書
株式会社インフォマート
出典:BtoBプラットフォーム 契約書 https://www.infomart.co.jp/contract/index.asp
BtoBプラットフォーム 契約書は、株式会社インフォマートが提供する企業間取引向け電子契約サービス。不動産管理会社やデベロッパー、法人向け仲介など、取引先が企業となる不動産事業者で活用しやすく、契約締結までの回付・押印・郵送の手間を削減できます。
社内の稟議や承認フローを踏む契約にもなじみやすい運用設計が特徴で、契約業務の標準化と可視化を進めやすい点が強み。管理委託契約や業務委託契約、各種覚書の電子締結、取引先への署名依頼、締結状況の追跡、リマインド送信が可能です。
締結後は契約書をクラウドで一元管理でき、検索、権限設定、履歴確認にも対応し、契約管理の抜け漏れ防止や監査対応の効率化にもつながります。
主な機能
- タイムスタンプ機能
- 電子署名機能(当事者型)
- 契約書の一括送付
- 電子文書の送付承認設定機能
ドキュサインの電子署名
ドキュサイン・ジャパン株式会社
出典:ドキュサインの電子署名 https://www.docusign.com/ja-jp
ドキュサインの電子署名は、ドキュサイン・ジャパン株式会社が提供する電子署名サービス。国内外での導入実績が豊富で、不動産売買や賃貸契約など、複数当事者が関与する取引でも利用されています。
多言語対応や国際的なセキュリティ基準に基づく運用が特徴。海外投資家や法人との不動産取引をオンラインで完結させ、契約スピードと管理精度を高められます。
署名依頼の一斉送信や締結ステータスの追跡、本人確認を含むワークフロー構築、契約書の保管と検索などにも幅広く対応しています。
主な機能
- 契約書のアクセスコード設定機能
- 本人確認書類による認証
- タイムスタンプ機能
- タイムスタンプの一括検証機能
CONTRACTHUB@absonne
日鉄ソリューションズ株式会社
出典:CONTRACTHUB@absonne https://www.marketing.nssol.nipponsteel.com/contracthub/solution/
CONTRACTHUB@absonneは、株式会社アブソンが提供する契約管理・電子契約サービス。不動産会社で発生しやすい契約書の分散管理や期限管理の煩雑さを整理し、業務の標準化を支援します。
契約情報をデータとして蓄積し、検索や確認をしやすい点が特徴。賃貸借契約や管理契約などの電子締結、契約期限のアラート管理、契約内容の検索、閲覧権限設定、履歴管理が可能です。
引き継ぎや監査対応の負担を抑え、内部統制を意識した不動産運営に役立ちます。
主な機能
- タイムスタンプ機能
- 電子署名機能(当事者型)
- 電子サイン機能(立会人型)
- 署名依頼のSMS送信機能
WAN-Sign
株式会社NXワンビシアーカイブズ
出典:WAN-Sign https://wan-sign.wanbishi.co.jp/
WAN-Signは、株式会社ワンビシアーカイブズが提供する電子契約サービス。不動産売買契約や重要書類など、長期保管や証跡管理が求められる契約に強みがあります。
WAN-Signの特徴は、文書保管サービスのノウハウを活かした高いセキュリティと信頼性です。
賃貸借契約書や売買契約書の電子署名、締結履歴の保存、契約書の安全な保管、検索や権限管理が可能。紙原本の管理負担を減らしながら、監査や社内確認に必要な情報へ迅速にアクセスできる体制を構築できます。
主な機能
- 契約書のアクセスコード設定機能
- 本人確認書類による認証
- タイムスタンプ機能
- 電子署名機能(当事者型)

不動産業界で電子契約サービスの導入が急増している背景には、実務運用を左右する制度改正と、取引プロセス自体の再設計が同時に進んだ点があります。契約関連書面の電磁的交付が可能となったことで、紙交付や押印を前提としたフローからの転換が現実的になりました。
加えて、IT重説を軸とする非対面取引が定着し、契約締結のスピードと確実性が重視される局面が増えています。さらに、印紙税や郵送費、保管コストといった間接費の圧縮も導入判断を後押ししています。ここでは、導入拡大を促す要因を3つに分けて解説します。
2022年5月の宅建業法改正により重要事項説明書・契約書の電子交付が可能に
2022年5月の宅地建物取引業法改正を機に、不動産取引の電子化は本格的な普及期を迎えました。賃貸借や売買の契約において、重要事項説明書などの完全ペーパーレス化が法的に認められたことは大きな転換点です。
従来必須だった書面の交付や押印は不要となり、デジタル完結型の契約スキームが確立されました。国土交通省が公表するガイドラインでも実務指針が明確に整理されているため、現在はコンプライアンスを遵守したスムーズな導入が可能です。
顧客側の行動変化も電子契約導入を後押しする要素です。
オンライン内見やIT重説の普及により、契約締結まで一度も来店しない取引が一般化しました。
特に遠方からの転居や投資用不動産の取引では、来店や郵送を前提とした契約手続きが顧客の負担になりやすい状況です。
スマートフォンやメールで完結する手続きが評価される傾向が強まり、電子契約への対応は顧客満足度の観点でも重要性を増しています。
印紙代や郵送費、書類保管コストの削減による収益改善
電子契約はコスト構造の見直しにも直結します。
紙の契約書では、印紙税、郵送費、製本作業、保管スペースなどが継続的に発生します。
電子契約に切り替えることで、契約件数が多い不動産会社ほど固定費・変動費の削減効果が大きくなります。特に更新契約や駐車場契約など、単価が低い取引では、コスト削減が利益改善に直結しやすい点が特徴です。

不動産取引に電子契約サービスを導入する価値は、契約業務そのものを効率化する点にとどまりません。契約締結までのスピード向上、定型業務の省力化、コスト構造の見直しなど、実務全体に波及効果があります。
特に賃貸・管理領域では、取引件数の多さが業務負荷に直結しやすく、電子契約による改善効果が顕著です。ここでは、不動産実務の観点から具体的なメリットを整理します。
契約締結までのリードタイム短縮によるキャンセル防止
電子契約サービスを導入することで、不動産契約成立までの時間を大幅に短縮できます。
紙契約では郵送や押印の往復が発生し、その間に入居辞退や条件変更が起きやすい状況でした。
電子契約であれば、重要事項説明後すぐに契約手続きへ進めるため、申込から契約までの期間を最小限に抑えられます。
結果として、繁忙期に多い直前キャンセルの抑制につながります。
契約書の製本・押印・郵送作業の撤廃による業務効率化とコスト削減
電子契約サービスを導入すると、契約関連のバックオフィス業務を大きく削減できます。
製本、押印依頼、郵送 準備といった作業は担当者の工数を圧迫しやすい業務です。
電子契約を導入することで、書類作成から締結、保管までを一連のオンライン操作で完結できます。人為的ミスの減少や、繁忙期の残業削減にも効果があります。
更新契約や駐車場契約など少額多件数取引の利益率向上
更新契約や駐車場契約は1件あたりの売上が小さい一方、契約書作成、押印依頼、郵送手配、返送確認といった事務工数が一定発生します。電子契約を導入すると、送信から締結までをオンラインで完結でき、1件あたりの処理時間を短縮できます。
更新案内の一斉送付や締結状況の可視化も可能になり、対応漏れや回収遅延を防ぎやすくなります。少額多件数の定型取引ほど、工数削減が利益率の改善に直結します。
紙契約は保管場所が分散しやすく、必要書類を探すだけで時間がかかることがあります。電子契約では、契約日、物件、契約種別、当事者名などの条件で検索でき、照会や提出が発生した際も迅速に対応できます。
加えて、閲覧権限の設定や操作ログの記録により、アクセス履歴を追跡しやすくなります。契約書の所在や改ざんリスクを抑え、監査対応や社内統制の強化にもつながります。
IT重説やオンライン内見と組み合わせた顧客体験向上
オンライン内見やIT重説を実施しても、契約手続きが紙対応のままだと押印や郵送の往復が発生し、顧客の負担が残ります。電子契約を組み合わせれば、説明から契約締結、控えの受領までをオンラインで完結でき、日程調整や移動の手間を最小化できます。
遠方からの転居、繁忙なビジネスパーソン、法人契約の決裁フローとも相性がよく、対応スピードと手続きのわかりやすさが評価されやすい取引環境を整えられます。
電子化の対象範囲|不動産取引で電子対応できる書面一覧
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不動産取引では、すべての書面を一律に電子化できるわけではなく、契約種別や書面の性質によって対応可否が異なります。実務で電子契約を安全かつ効率的に運用するためには、どの書面が電子対応でき、どこに留意点があるのかを整理しておくことが重要です。
不動産取引で電子対応できる書面一覧
- 賃貸借契約書
- 重要事項説
- 更新契約書
- 解約合意書
- 不動産売買契約書
- 管理委託契約書
- 更新・覚書
- 入居申込書
- 保証委託申込書(一部対応)
ここからは、賃貸・売買・管理などの場面ごとに、電子化のポイントや留意点を詳しく解説します。
賃貸借領域は電子契約の適用範囲が広く、導入効果が出やすい分野です。賃貸借契約書や重要事項説明書は電子交付が可能で、IT重説と組み合わせることで、説明から締結までオンラインで完結しやすくなります。
また、更新契約書や解約合意書も電子化の対象となり、繁忙期の事務負担を平準化できます。一方で、借主の閲覧環境や電子交付への同意取得、説明・合意の記録保存など、実務上の手順を統一しておくことが運用安定のポイントです。
賃貸契約で電子化可能な書面の種類 | 実務上の主な留意点 |
|---|
賃貸借契約書 | 借主の同意取得と閲覧環境の確認が必要 |
重要事項説明書 | IT重説の実施と説明記録の保存が必須 |
更新契約書 | 更新条件の明示と締結期限管理に注意 |
解約合意書 | 合意日時と意思確認の記録を残す必要あり |
売買契約でも主要書面の電子交付は可能ですが、賃貸よりも関係者が増えるため、調整設計が重要になります。不動産売買契約書や重要事項説明書を電子化する場合、売主・買主に加えて、仲介会社の運用、金融機関の手続き、司法書士の段取りなどが論点になります。
特に契約締結日や決済日が固定されやすい取引では、電子署名の導線、本人確認、締結完了の確認手順を事前に整備しておくとトラブルを防げます。紙書面が一部残る前提で、混在運用も想定しておくと現場負担を抑えられます。
売買契約で電子化可能な書面の種類 | 実務上の主な留意点 |
|---|
不動産売買契約書 | 関係者全員の電子契約同意が前提 |
重 要事項説明 | 書面内容の事前送付と説明手順の整備 |
管理業務(管理・更新・解約など)で電子化できる書面
管理業務は定型処理が多く、電子化による工数削減が効きやすい領域です。管理委託契約書を電子化できれば、オーナーとの契約締結から保管までが一元化され、契約更新や覚書の対応もスムーズになります。
更新・解約などは、期日管理と連絡が業務品質を左右しやすいため、電子契約サービスの進捗管理機能やリマインド機能と相性が良い点も特徴です。オーナー側のITリテラシーや社内稟議の流れを踏まえ、導入初期は紙との併用やサポート導線を用意すると定着しやすくなります。
管理業務で電子化可能な書面の種類 | 実務上の主な留意 点 |
|---|
管理委託契約書 | オーナー側の電子契約理解が重要 |
更新・覚書 | 定型化による一斉対応が可能 |
申込段階の電子化は、契約前のやり取りを短縮し、審査や手戻りを減らす効果が期待できます。入居申込書は電子フォームと併用しやすく、記入漏れの防止や即時共有が可能になります。
一方、保証委託申込書は保証会社ごとに対応状況が異なり、電子対応ができても運用ルールが細かいケースがあります。申込情報は個人情報の取扱いが中心となるため、送信経路の安全性、閲覧権限、保存期間などの管理要件を先に決めておくことが重要です。審査結果通知や本人確認と連動できると、全体フローの一体運用が進みます。
書面の種類 | 電子対応可否 | 実務上の主な留意点 |
|---|
入居申込書 | 対応可 | 電子フォームとの併用が一般的 |
保証委託申込書 | 一部対応 | 保証会社ごとの対応状況を確認 |
電子契約の 導入後も、取引全体が完全にペーパーレスになるとは限りません。金融機関提出書類は原本提出が求められることが多く、融資利用の売買では紙対応が残りやすい傾向があります。行政提出書類も、電子申請の可否や自治体・手続きの種別によって運用が異なるため、個別確認が必要です。
現場では、どこまでを電子契約サービス内で完結させ、どこからを紙・別手段で処理するかの線引きが重要になります。顧客への案内文やチェックリストを用意し、混在運用でも迷いが出ない設計にしておくと運用が安定します。
書面の種類 | 電子対応可否 | 実務上の主な留意点 |
|---|
金融機関提出書類 | 原則紙 | 原本提出が求められるケースが多い |
行政提出書類 | 原則紙 | 電子申請対応の有無を個別確認 |

不動産会社が電子契約サービスを導入する際は、業務効率化やコスト削減といったメリットだけでなく、実務運用まで見据えた設計が欠かせません。電子契約は法令上認められている一方、顧客や取引先の対応可否、社内フローの整備状況によっては、かえって混乱を招く可能性もあります。
安定した運用を実現するためには、想定される課題を事前に洗い出し、代替手段やルールを用意しておくことが重要です。ここでは、導 入後につまずきやすいポイントと、その対応策を整理します。
電子契約に対応できない顧客や取引先への代替手段を用意する
電子契約は利便性が高い一方、全員が同じ条件で利用できるとは限りません。高齢の顧客でメールやスマートフォン操作が難しい場合、法人側の社内規程で電子署名が認められていない場合など、紙対応が必要なケースは現実的に残ります。
運用を止めないためには、電子と紙の併用方針を最初に定め、どの条件で切り替えるかの基準を明文化することが重要です。たとえば郵送フロー、対面署名の手順、代理人対応の可否などを整理し、現場が迷わない案内文やチェック項目も準備しておくと、顧客体験を損なわずに運用できます。
宅建業法・ガイドラインを踏まえた社内ルールと契約フローを整備する
電子契約の導入でつまずきやすいのは、法令対応そのものよりも、現場の運用が案件ごとにブレることです。重要事項説明書や契約書を電磁的に交付する場合、同意取得の方法、 交付のタイミング、説明記録の残し方などを社内で統一しておく必要があります。
担当者ごとに手順が異なると、説明漏れや確認不足が発生しやすく、後工程の差し戻しにもつながります。部門横断で標準フローを作り、役割分担、承認経路、例外処理を含めた手順書に落とし込むと運用が安定します。監査やクレーム対応を見据え、証跡の残し方まで具体化することがポイントです。
契約書テンプレートと保存方法を電子契約前提で見直す
電子契約サービスを導入しても、契約書の書式や保管ルールが紙前提のままだと、業務効率は伸びにくくなります。まず契約書テンプレートは、電子署名の表示位置、添付資料の扱い、別紙の管理方法など、電子で完結する前提に合わせて見直します。あわせて、ファイル名の付け方や検索項目の設計を統一すると、契約後の照会対応が速くなります。
保存については、保管場所の一元化、アクセス権限、保存期間、閲覧ログの扱いなどをルール化し、誰がどこまで参照できるかを明確にしておくことが重要です。原本性の説明が求められ る場面に備え、出力手順や提出手順もセットで整備すると安心です。
電子契約サービスはシステムに依存するため、障害時の対応を想定しておかないと、締結遅延や顧客対応の混乱につながります。
まず確認したいのは、サービス側の稼働実績や復旧方針、問い合わせ窓口の対応時間です。次に、自社側の運用として、締結期限が迫る案件が止まった場合の代替手段を用意します。たとえば紙契約への切り替え基準、再送手順、顧客への案内テンプレート、担当者不在時の引き継ぎルールなどです。
さらに、データ保全の観点で、契約書データのエクスポート可否、バックアップ頻度、退会時のデータ取り出し条件も事前に把握しておくとリスクを減らせます。重要案件ほど、例外時の動き方を訓練しておくと安心です。

不動産取引における電子契約の基本的な流れは、紙契約と大きく変わるものではありません。物件説明や重要事項説明を経て契約条件を確認し、当事者双方が合意したうえで契約を締結する点は共通しています。
異なるのは、押印や郵送といった作業がオンライン上の操作に置き換わる点です。事前に流れを整理しておくことで、担当者間の認識差や顧客の不安を減らし、スムーズな契約進行につながります。
電子契約による契約締結までの主な流れ
- 物件説明・条件調整
- 重要事項説明の実施(対面またはIT重説)
- 電子交付に関する同意取得
- 契約書データの作成・送信
- 電子署名・契約締結
- 契約書データの保管・共有
上記の流れでは、重要事項説明後に電子交付の同意を取得し、そのまま契約書送信へ進める点が特徴です。契約書は電子契約サービス上で送信され、当事者はメールや専用画面から内容を確認し、電子署名を行います。締結後は自動的に契約書が保管され、管理画面からいつでも確認できます。
郵送待ちや押印確認が不要になるため、契約完了までの時間を短縮しやすく、顧客への進捗連絡や社内共有も円滑になります。事前に説明資料や操作案内を用意しておくと、初めて電子契約を利用する顧客でも安心して進められます。

電子契約サービスは数多く提供されていますが、不動産会社にとって重要なのは、単に電子署名ができるかどうかではありません。宅建業法への対応状況や、自社が扱う契約種別との適合性、既存システムとの連携可否など、実務視点で確認すべきポイントは多岐にわたります。
ここでは、不動産実務で継続的に活用できる電子契約サービスを選ぶための判断軸を整理していきましょう。
宅建業法や国土交通省ガイドラインへの対応状況を確認する
不動産取引で電子契約を運用するうえで、宅建業法や国土交通省ガイドラインへの対応は最優先で確認すべきポイントです。
重要事項説明書や契約書の電子交付に関する要件を満たしていないサービスを利用すると、運用自体が成立しません。電子交付時の同意取得方法、説明記録の保存、証跡管理の考え方が明確に示されているかを確認しましょう。公式サイトや資料で不動産取引への対応が明記されてい るか、導入事例があるかも判断材料になります。
賃貸・売買・管理・サブリースなど自社が扱う契約種別への対応範囲を確認する
電子契約サービスによって対応できる契約種別は異なります。賃貸契約には対応していても、売買契約や管理委託契約には非対応というケースもあります。
自社が扱う賃貸、売買、管理、サブリースなどの契約を洗い出し、どこまで電子化したいかを整理したうえで選定することが重要です。将来的に取り扱う可能性がある契約も含めて確認しておくと、後からサービスを切り替える手間を減らせます。
IT重説やオンライン本人確認との一体運用が可能か確認する
電子契約は単体で導入するよりも、IT重説やオンライン本人確認と組み合わせた方が効果を発揮します。重要事項説明から契約締結までを一連の流れで運用できるか、外部サービスとの連携実績があるかを確認しましょう。
ツールが分断されていると、操作説明や進捗管理が煩雑になりやすくなります。顧客と担当者双方の操作負担を減らせる設計かどうかが、実務定着の分かれ目になります。
不動産基幹システムや募集図面・顧客管理システムと連携できるか確認する
電子契約サービスを導入しても、契約情報を手作業で転記していては業務効率は向上しません。自社で利用している不動産基幹システムや顧客管理システムと連携できるかを確認することが重要です。
API連携やCSV連携の有無、二重入力が発生しない設計かどうかが判断ポイントになります。契約後のデータ活用や管理業務まで見据えて選定すると、導入効果を最大化できます。
オーナーや入居者のITリテラシーを踏まえた操作性とサポート体制を確認する
電子契約は、利用者が迷わず操作できることが前提になります。オーナーや入居者のITリテラシーを考慮し、スマートフォン操作に対 応しているか、画面が直感的かを確認しましょう。
あわせて、操作説明資料や問い合わせ対応などのサポート体制も重要です。導入初期に質問が集中しやすいため、ベンダー側のサポート品質は運用負荷を大きく左右します。
初期費用や月額費用、1件あたり送信単価を含めたコスト構造を確認する
電子契約サービスの費用体系は、初期費用、月額費用、送信件数に応じた従量課金などに分かれます。契約件数が少ない場合と多い場合で、どちらが割安になるかをシミュレーションしておくことが重要です。
また、本人確認やAPI連携などがオプション扱いになるケースもあります。短期的な金額だけでなく、継続利用時の総コストを把握したうえで比較検討すると失敗を防げます。
不動産会社が電子契約サービスを導入する際の費用相場
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電子契約サービスの費用は、月額の固定費に加えて、送信件数に応じた従量課金や、本人確認・API連携などのオプション費用が加算される設計が一般的です。契約件数が多い不動産会社ほど、1件あたり単価と固定費のバランスが総額に反映されます。
ここでは費用の内訳を整理し、予算化しやすい相場感と見積もりの考え方を解説します。
電子契約サービスの基本コストは、月額基本料金と初期費用の組み合わせで捉えると整理しやすくなります。月額基本料金相場としては、基本プランが月額5,000〜1万円程度、上位プランで月額3万円程度まで広がる傾向です。
不動産会社では、店舗単位で小さく始めるか、複数部署や全社利用を前提にするかで選ぶプランが変わります。小規模運用なら月額1万円前後のプランから、内部統制や管理機能を重視するなら2〜3万円帯を想定すると予算化しやすいです。
初期費用はサービスによって金額設定がさまざまですが、基本的に導入タイミングにのみ発生します。初期費用が高さだけで判断せず、毎月の費用と継続期間をふまえてシミュレーションして比較しましょう。
従量課金は、契約書の送信や署名依頼の都度発生する費用で、月間件数が増えるほど総額に直結します。相場は1件あたり50〜300円程度とされ、サービスや署名方式によって幅があります。
見積もりでは、月額基本料金に加えて、月間の想定送信数×送信単 価を足し合わせます。賃貸仲介のように繁忙期に件数が偏る業態では、繁忙月のピーク件数を基準に試算するとブレが小さくなります。
不動産実務で追加費用になりやすいのは、本人確認の強化、対面契約、SMS認証、API連携、紙文書の取り込み・管理などです。
また、契約書管理を電子契約と一体で進めたい場合、スキャン文書管理やインポート保管の追加費用が発生することがあります。 見積もり時は、現場で必要な運用要件を先に確定し、必須オプションと将来検討オプションを分けて試算すると、導入後の追加請求を避けやすくなります。
まとめ|不動産会社に適した電子契約サービスを選び契約業務をアップデートする
不動産会社にとって電子契約サービスは、契約業務を効率化するための手段にとどまらず、取引全体の進め方を見直すきっかけになります。
宅建業法やガイドラインへの対応を前提に、自社が扱う契約種別や取引量、顧客属性に合ったサービスを選ぶことで、契約締結までのスピードや業務品質を安定させやすくなります。
あわせて、IT重説や基幹システムとの連携、紙対応が残る場面への備えまで含めて設計することが重要です。短期的な費用だけで判断せず、運用負荷や将来の拡張性も見据えて選定すれば、契約業務のアップデートが現場に定着し、継続的な改善につながります。
運営に関するお問い合わせ、取材依頼などはお問い合わせページからお願いいたします。