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医療機関向けCRMツールおすすめ8選|選び方と導入ポイント

更新日 2025年11月26日
患者との関係づくりや再来院の促進、地域医療連携の強化など、医療機関におけるCRMツール(顧客管理システム)の活用の幅は広がっています。一方で、医療では電子カルテ・レセコンとの連携、厳格な個人情報管理、診療フローに沿った運用設計など、一般企業のCRM選びとは異なる注意点が多くあります。
そこで本記事では、医療機関での導入実績や医療特化機能に注目しながら、おすすめのCRMツールを比較して紹介します。選定ポイントや失敗しやすい点も整理するので、自院に合うツールを判断する材料として活用してください。

医療機関向けCRMツールおすすめ8選

ここでは、実際に医療業界で多くの病院やクリニックに選ばれているCRMを、具体的な導入事例とともに初心者向けにわかりやすくご紹介します。
Salesforce Sales Cloud

Salesforce Sales Cloud

株式会社セールスフォース・ジャパン
出典:Salesforce Sales Cloud https://www.salesforce.com/jp/products/sales-cloud/overview/
参考価格
12,000
/ユーザー
トライアルあり

Salesforce Sales Cloudは、世界的に利用されているクラウドCRMの中核製品で、医療機関では患者・紹介元・企業健診契約先など多様な「関係者」を統合管理する基盤として採用されますSalesforceはヘルスケア領域向けのデータ統合・ワークフロー自動化を強く打ち出しており、Sales Cloudを土台に医療向けの運用へ拡張する使い方が一般的です。  

医療現場でのSales Cloudの強みは、患者・紹介元・連携先を同一プラットフォームで管理できる拡張性と、部門横断の情報共有を前提にした権限設計の柔軟さ。診療前の問い合わせから受診後のフォロー、健診の再受診案内、自由診療のカウンセリング進捗、さらには地域連携の紹介・逆紹介管理まで、医療機関ごとのフローに合わせてデータモデルや画面を設計できます。

また、関係者情報を統合し、患者ライフサイクル全体の接点履歴を継続的に蓄積できます。診療後フォローや連携業務はタスクやワークフローとして自動化できるため、対応漏れの防止や引き継ぎ効率の向上にもつながります。

主な機能
  • クラウド(SaaS)
  • 自動記録・文字起こし
  • 導入支援・運用支援あり
  • スマホアプリ(iOS)対応
Zoho CRM

Zoho CRM

ゾーホージャパン株式会社
出典:Zoho CRM https://www.zoho.com/jp/crm/
参考価格
無料
無料プランあり
トライアルあり

Zoho CRMは、患者情報・対応履歴・自由診療の進捗・紹介元データなどを一元管理できるクラウドCRMです。医療データのような機微情報に対応する暗号化やアクセス制御、監査ログなどのセキュリティ機能も備え、医療機関での運用設計に合わせて柔軟にカスタマイズできます。

医療機関でZoho CRMが選ばれやすい理由は、低コストで導入しやすい一方、診療科や院内フローに合わせた項目・ステータス設計が細かくできる点です。例えば、同意取得状況、治療ステージ、再来予定、カウンセリング履歴、紹介経路など医療固有の管理項目を追加し、スタッフ間で同じ患者像を共有する運用に向きます。

また、患者の基本情報に加え、受診履歴、同意状況、連絡・相談履歴を一つの画面で管理できるため、部門や職種が変わっても患者の背景や経緯を把握しやすくなります。権限設定や監査ログを通じて医療情報へのアクセス統制を組み込めるほか、ワークフローでフォロー連絡や院内タスクを自動化し、対応漏れの防止にも寄与します。

主な機能
  • クラウド(SaaS)
  • 導入支援・運用支援あり
  • スマホアプリ(iOS)対応
  • スマホアプリ(Android)対応
esm(eセールスマネージャー)

esm(eセールスマネージャー)

ソフトブレーン株式会社
出典:esm(eセールスマネージャー) https://www.e-sales.jp/
参考価格
3,500
/ユーザー
トライアルあり

esm(eセールスマネージャー)は、国産のCRM/SFAとして、顧客情報と活動履歴を蓄積し、業務の見える化と定着支援に強みを持つクラウド型ツールです。医療機関では、患者対応や紹介・連携活動の履歴を組織で共有するためのCRM基盤として活用されます。

esmの特徴は、入力負荷を抑えつつ現場で使い続けられる設計と、国産ならではの手厚い導入・定着支援です。医療では、相談窓口や地域連携室、自由診療カウンセラーなど多職種が患者・連携先と関わるため、活動履歴を統一フォーマットで残し、引き継ぎやカンファレンスの質を高める用途と相性が良いのが特徴です。

また、患者や紹介元、連携先ごとに対応履歴や活動ログを一元化し、地域連携室や相談窓口での面談・調整業務の進捗を可視化することも可能。蓄積したデータから紹介・逆紹介の傾向や連携アクション量を分析し、連携強化の打ち手を検討する材料にすることも可能。モバイルやワークフローを使えば、現場で得た情報を即時共有し、院内のタスク連携をなめらかに行えます。

主な機能
  • クラウド(SaaS)
  • 導入支援・運用支援あり
  • スマホアプリ(iOS)対応
  • スマホアプリ(Android)対応
Synergy!

Synergy!

シナジーマーケティング株式会社
出典:Synergy! https://www.synergy-marketing.co.jp/cloud/synergy/
参考価格
20,000
円~
トライアルあり

Synergy!(シナジー)は、顧客データベースとメール/LINE配信などのコミュニケーション機能を統合した国産CRM/MAツールです。医療機関では、患者フォローや再来院促進、検診・予防啓発など「適切なタイミングでの情報提供」を仕組み化する目的で導入されます。

医療でのSynergy!の強みは、患者属性・受診目的・行動履歴に基づくセグメント配信を、LINEやメールで実行できる点。たとえば、健診対象者への予約リマインド、慢性疾患の継続受診促進、自由診療の術前/術後フォローなど、患者ごとに必要な案内を送り分けられます。LINE連携が標準機能として整っており、患者との日常的な接点を作りやすいのも特徴です。

また、患者データを属性や受診履歴で細かく分類し、予約リマインドや検診案内、術後ケアなどをLINE・メールで自動配信できます。条件分岐つきのシナリオ設計で内容やタイミングを最適化でき、配信結果の分析を通じて施策を改善しながら再来院・継続受診の促進につなげられます。

主な機能
  • クラウド(SaaS)
  • 電話サポートあり
  • ISMS
  • メールサポートあり
NetSuite CRM

NetSuite CRM

日本オラクル株式会社
出典:NetSuite CRM https://www.netsuite.co.jp/products/crm.shtml
参考価格
お問い合わせ

NetSuite CRMは、Oracle NetSuiteが提供するクラウドCRMで、顧客(患者・紹介元・法人契約先)情報や対応履歴を一箇所で管理し、組織全体で共有することを狙った製品です。医療機関での導入事例もあります。

医療でNetSuite CRMを使う利点は、CRMと基幹系(会計・購買など)を一体管理しやすい拡張性です。病院グループや健診センターなど、患者管理だけでなく法人健診契約・請求・物品/在庫と連動した運用を視野に入れる場合に適します。情報を単一基盤へ寄せることで、患者/契約先ごとの全体像を把握しやすくなります。

患者、紹介元、法人契約先といった複数の関係者情報を統合し、問い合わせやコールセンター対応の進捗・履歴を院内で共有可能。健診や予防サービスなど継続性のある契約については、更新やフォロー状況を追跡できるため、長期的な受診・契約維持を支える運用に向きます。

主な機能
  • クラウド(SaaS)
  • スマホアプリ(Android)対応
  • スマホアプリ(iOS)対応
  • 顧客管理機能
ALL-IN

ALL-IN

株式会社エステイエス
出典:ALL-IN https://web.all-in.xyz/
参考価格
3,900
/

ALL-INは、CRM/SFAを含む業務機能をオールインワンで備えるクラウド経営システムです。医療機関で使う場合は、患者・紹介元・法人契約先といった関係者管理を起点に、院内の関連業務データとつなげて管理したいケースで選択肢になります。

特徴は、CRM単体ではなく関連業務までまとめてつなぐ思想にあります。医療現場では、患者フォローCRMと、健診契約・請求・院内業務の情報が分断しがちですが、ALL-INは同一基盤で顧客(患者/契約先)情報を共有できるため、バックオフィスと現場のデータの行き来を減らす方向で運用設計できます。

また、患者や法人契約先、紹介元の情報を一元管理し、問い合わせやフォロー施策の履歴を継続的に蓄積可能。さらにCRM情報を起点に、会計や販売管理、人事など周辺業務データを同じ基盤で扱えるため、医療機関内の関連部署が共通の顧客情報を参照しながら業務を進められます。

主な機能
  • 残業手当の自動計算機能
  • 受領帳票の保存
  • 顧客管理
  • 財務会計
Customer Rings

Customer Rings

株式会社プラスアルファ・コンサルティング
出典:Customer Rings https://www.customer-rings.com/
参考価格
お問い合わせ

Customer Ringsは、顧客データ統合・分析と、メール/LINEなどの配信施策を一体化したCRM/MAツールです。医療では、患者データのセグメント化と継続フォロー施策(検診・予防・再来院等)の改善を目的に活用されます。

医療機関でのCustomer Ringsの魅力は、患者の属性・受診履歴に基づいて「誰に・いつ・何を伝えるか」を分析から配信まで同一ツールで回せる点。特にBtoC型の自由診療や健診サービスでは、来院後の継続接点が重要になるため、LINE連携を使ったリマインドや啓発配信をシナリオ化しやすい構造になっています。

また、患者データを統合し、受診頻度やメニュー、属性などの条件でセグメントを作成したうえで、LINEやメールを通じた再来院リマインドや予防啓発を自動で配信可能。配信内容は患者の状態や反応に応じてシナリオ化できるため、健診・予防接種・自由診療など継続的な受診を促したい領域で効果的に運用できます。

主な機能
  • ISMS
  • クラウド(SaaS)
  • Pマーク
  • 顧客管理機能
F-RevoCRM

F-RevoCRM

シンキングリード株式会社
出典:F-RevoCRM https://f-revocrm.jp/
参考価格
20,000
円~
トライアルあり

F-RevoCRMは、顧客情報・問い合わせ対応・マーケ施策まで幅広く一元管理できる国産CRMです。医療機関での活用事例として、患者受け入れ情報の共有や属人化解消、連携強化に利用されたケースが公開されています。

医療でF-RevoCRMが活きるのは、オープンソース由来の高いカスタマイズ性で、院内の患者管理フロー・地域連携フローに合わせやすい点です。紹介患者の受け入れ・退院後フォロー・MSW/地域連携室の調整履歴など、医療独自のプロセスを画面や項目に落とし込み、権限設定で厳格に運用できます。

また、地域連携室が担う受け入れ調整や逆紹介の管理も、プロセスに沿って履歴を残せるため、担当変更時の引き継ぎや院内外の情報共有がスムーズになります。権限設定や監査ログを前提に医療情報のアクセス統制を組めるほか、院内システム連携や帳票出力などをカスタマイズして、医療機関固有の運用フローに合わせたCRM基盤として拡張可能です。

主な機能
  • クラウド(SaaS)
  • 導入支援・運用支援あり
  • オンプレミス(パッケージ)
  • モバイルブラウザ(スマホブラウザ)対応

医療機関でCRMツールが求められる背景

医療機関でCRMツールが求められる背景のイメージ
医療機関を取り巻く環境は、人口構造の変化や医療DXの進展、患者の価値観の多様化によって大きく変わっています。診療の質だけでなく、予約のしやすさや説明、フォローの丁寧さなど「受診体験」が選ばれる理由となり、現場には継続的な関係づくりと業務効率化の両立が求められています。
ここからは、こうした変化を踏まえ、CRMツールが必要とされる背景をより詳しく解説していきます。

患者ニーズの多様化と「継続受診」「体験重視」の流れが加速

医療機関を取り巻く患者ニーズは、年々多様化かつ高度化しています。治療の質だけでなく、通いやすさ、安心感、十分な説明、適切なフォローといった「体験価値」が選ばれる要因になりつつあります
さらに慢性疾患や生活習慣病など、長期的な受診を前提とする患者も増加。医療機関側には「一度きりの診療」ではなく「継続的な関係づくり」が求められるようになりました。
こうした流れは国の医療DX政策とも方向性が一致しています。医療DXは「受診〜治療〜連携〜予防」まで切れ目なくデータを活用し、国民の健康増進と医療の質・効率の向上を目指す取り組みです。患者理解と継続支援の基盤として、医療機関側のCRM活用ニーズが高まる素地があります。

予約と問診、フォローの分断が生む現場負荷

予約・問診・フォローといった周辺業務が分断されたままだと、医療現場の負荷は確実に増えます。その理由は、ツールや紙、属人的な運用が混在することで情報がつながらず、確認や調整の“やり直し”が日常的に発生するためです。
実際に、予約情報と問診内容が連携していなければ、来院時に受付や看護師が一つひとつ確認し直す必要が出てきます。また、診療後の注意点や次回案内が紙中心の場合も、説明が抜けやすく、あとから問い合わせ対応が増える原因になります。加えて無断キャンセルや直前変更が起きた際にも対応に追われがちです。
だからこそ、慢性的な人手不足が続く医療現場では、分断された業務をつなぎ直す作業を減らし、情報と運用を一体で整える仕組みづくりが重要になります。

地域医療連携の可視化と継続管理の必然性

地域医療連携を機能させるには、連携状況を可視化し、紹介・逆紹介を継続的に管理できる体制を整えることが必然と言えます。
その理由は、超高齢社会の進行で医療機関の役割分担が前提となり、患者の状態に応じて切れ目なく医療をつなぐ仕組みが求められているためです。連携が場当たり的なままだと、患者移行が滞ったり、関係性が属人的になったりして地域全体の医療の質を保ちにくくなります。
また、現場では紹介状や検査情報が紙やFAX中心で、紹介の流れを追跡・集計しづらいことが少なくありません。その結果、紹介元や疾患傾向が把握できず改善につなげにくいほか、逆紹介の状況も継続的に管理できないまま連携成果が見えづらくなります。
だからこそ、紹介・逆紹介をデータとして捉え、可視化と継続管理を前提に地域連携を運用する取り組みは、今後の医療機関にとって欠かせないものです。

医療現場におけるCRMの役割とカバーする業務範囲

医療におけるCRMツールの役割とカバーする業務範囲のイメージ
医療向けCRMは、単なる患者情報の保管ツールではなく、医療機関と患者、そして地域の医療資源をつなぐ“関係管理の基盤”として機能します。初診から治療、再来、予防までの患者ライフサイクルを支え、診療前後のコミュニケーションや自由診療のリピート対応、紹介・逆紹介を含む地域連携まで幅広くカバーできる点が特徴です。
ここでは医療CRMが担う役割と業務範囲を整理します。

患者ライフサイクル(初診〜治療〜再来〜予防)の一元管理

医療CRMの核は、患者を一回の受診で終わる「点」としてではなく、時間軸で続く「線」として把握することにあります。初診時の基本情報や主訴に加え、診療・検査・治療の履歴、同意内容、再来予定、相談記録、家族構成や生活背景までを一つの画面で追えるようにすることで、患者の現在地と次に必要なケアがすぐに見えます。
たとえば前回の指導内容や副作用の訴えを踏まえて説明を補強したり、受診間隔の空き具合から中断リスクを察知したりできます。治療の節目ごとに情報が整理されるため、医師・看護師・受付間の共有も滑らかになり、対応のばらつきも抑えられます。
患者からの問い合わせや生活上の困りごとも履歴化され、個別性の高い支援を続けやすくなる点も大きなメリットです。結果として、治療効果と満足度の両方を長期で高める運用が可能になります。

診療前後コミュニケーションの強化

診療の質は診察室内だけで決まるものではなく、来院前後のコミュニケーションが受診体験全体を形づくります。医療CRMは予約取得から来院までの案内、事前問診の配信、前日や当日のリマインド、受付誘導を一連の流れとして整え、患者の不安と待ち時間を減らします。
診療後も、服薬や生活指導の再案内、検査結果の補足説明、次回予約や検査の提案を適切なタイミングで届けられるため、説明漏れや聞き逃しを防ぎやすくなります。チャネル別の反応も記録できるので、連絡が届きにくい層には手段や文面を変えるなど改善を回せます。
さらに問い合わせ内容を蓄積すれば、よくある質問の先回り対応や教育資料の整備にも活用でき、現場負荷の軽減と患者満足の両方を強化できます。診療外の接点を整えるほど、再来院の後押しにもつながります。患者にとっても「迷わず通える仕組み」になります。

自由診療におけるカウンセリング〜成約〜リピート管理

美容医療や歯科の自費治療、健診オプションなどの自由診療では、患者の意思決定プロセスが長く、比較検討の途中で離脱しやすいのが特徴です。医療CRMを使えば、カウンセリングで聞いた希望や迷い、提示したプランの内容と見積もり、説明資料の送付や連絡履歴を一括で記録できます。
担当者が変わっても情報が引き継がれるので、患者の温度感に合わせた一貫性のある提案が可能です。加えて検討段階ごとにフォローメッセージを自動化したり、来院履歴から次回提案のタイミングを可視化したりできます。
成約後の経過管理、定期フォロー、再施術の提案まで同じデータ上で回せるため、受診間隔の最適化や離脱防止にもつながります。スタッフ間で成功パターンを共有しやすくなり、売上管理と顧客満足の両面で改善サイクルを回しやすくなります。結果的にリピート率の底上げが期待できます。

連携先医療機関・紹介元の関係管理(地域連携CRM/PRM)

地域医療連携を強めるには、紹介元・連携先との関係を患者とは別の軸で継続的に管理する視点が必要です。医療CRM/PRMでは、連携先ごとの紹介傾向、依頼内容や対応履歴、逆紹介の実施状況、連携イベントの参加履歴などを蓄積し、どの関係が活発でどこに改善余地があるかを把握できます。
たとえば特定診療科からの紹介が減っている場合に早期に気づき、情報共有や面談など次のアクションにつなげられます。連携先別のレポートを定期的に出せば、院内の目標管理や診療報酬の要件確認にも使えます。
さらに担当替えがあっても履歴が残るため連携が途切れにくく、紹介の質と量を安定させられます。こうして地域全体の患者導線が整うと、自院の役割が明確になり、より適切な医療提供体制を築けます。連携の見える化が進むほど、地域内の信頼関係も深まりやすくなります。

医療機関向けCRMツールの主要機能

医療向けCRMツールの主要機能のイメージ
医療CRMツールは、患者との継続的な関係づくりと現場業務の効率化を同時に支えるための機能を備えています。患者データの統合を土台に、予約や問診の運用を自動化し、再来院支援や地域連携の精度を高められる点が特徴です。
ここでは医療CRMに共通する主要機能を整理します。

患者属性、受診履歴、同意状況の統合管理

医療CRMの基盤となるのが、患者に関する情報を一つにまとめて把握できる統合管理機能です。氏名や連絡先、既往歴といった基本属性に加え、受診・検査・治療の履歴、説明内容や同意取得の状況などを時系列で紐付けて閲覧できます。
これにより診療前から患者の背景や注意点を把握しやすくなり、説明の重複や確認漏れを防げます。スタッフ間の引き継ぎも滑らかになり、患者対応の質を安定させながらチーム医療を支える土台になります。

予約、問診、リマインド配信の自動化

予約から来院までのプロセスを自動化できる点は、医療CRMの大きな価値です。予約情報と連動して事前問診を配信し、回答内容を診療側へ共有することで受付の確認負荷や待ち時間を減らせます。
さらに前日・当日リマインドの自動送信により無断キャンセルを抑え、変更や再予約の案内もスムーズになります。電話や紙で対応していた作業を仕組み化することで、限られた人員でも安定した外来運営が可能になり、患者にとっても通いやすい受診体験につながります。

患者セグメント分析と再来院・疾患啓発施策

統合した患者データをもとに、年齢層や疾患、来院周期、治療ステータスなどで層別化し、必要な支援を最適化できるのがセグメント分析機能です。
たとえば受診間隔が空き始めた患者を早期に捉え、検査案内や再来院の働きかけを行えます。予防接種や健診の対象者に時期別で情報提供するなど、疾患啓発や予防支援にも活用可能です。患者ごとの状況に応じたコミュニケーションが定着すると、自己中断の防止や治療継続の後押しにつながります。

紹介・逆紹介データの管理とレポーティング

地域連携を継続的に改善するためには、紹介・逆紹介の実績をデータとして管理し、可視化できる仕組みが欠かせません。医療CRMでは紹介元・紹介先別の件数推移や疾患傾向、紹介から受診までのリードタイム、逆紹介の実施状況などを一元化し、レポートとして出力できます。
偏りや変化を早期に捉えられるため、連携先へのフィードバックや役割分担の見直しが進めやすくなります。属人的だった地域連携を組織的な運用へと引き上げる機能です。

マルチチャネル対応(SMS/メール/LINE等)

患者との接点は年代や生活スタイルで異なるため、複数チャネルを統合運用できる機能が重要です。医療CRMはSMS、メール、LINEなどを一つの基盤で管理し、患者ごとに最適な手段で案内やフォローを届けられます。
チャネルをまたいでも送信履歴や反応が記録されるため、「いつ・誰に・何を伝えたか」が現場で共有できます。到達率や反応の差を見ながら文面や手段を改善でき、連絡の行き違いを減らしつつ受診体験の質を高めることが可能になります。

医療機関がCRMツール導入で得られるメリット

医療機関がCRMツール導入で得られるメリットのイメージ
医療機関のCRMツール導入は、患者対応の質を整えながら、現場の負荷や経営面の課題を同時に改善できる点に価値があります。診療前後の接点や患者データを一元化することで、継続受診の支援や地域連携が強まり、安定した運営にもつながります。
ここでは導入によって得られる代表的なメリットを整理します。

患者対応の標準化と窓口・コールセンター負荷の軽減

医療機関がCRMツールを導入すると、患者対応の手順や情報参照の流れを統一しやすくなり、対応品質の標準化が進みます。患者属性、受診履歴、連絡履歴が一画面で確認できるため、誰が対応しても同じ前提で会話でき、説明のばらつきや引き継ぎ漏れを防げます。
予約変更や問い合わせへの対応も履歴を見ながらスムーズに行えるため、窓口やコールセンターでの再確認が減り、対応時間の短縮にも効果的。さらにリマインドや事前案内を自動化すれば、そもそも問い合わせが発生しにくい状態をつくれます。結果として、限られた人員でも安定した患者対応を維持しやすくなり、現場の心理的・時間的負荷の軽減が期待できます。

診療の抜け漏れ防止と治療継続率の向上

CRMは診療以外の情報も含めて患者の状況を一元で見渡せるため、診療の抜け漏れ防止に役立ちます。前回の指導内容、検査の予定、同意状況、相談履歴がまとまっていれば、医師やスタッフが確認すべき点を見逃しにくくなります。
また、受診間隔の空きや未実施の検査などを可視化できることで、治療の中断リスクを早期に捉え、フォロー連絡や再予約の案内につなげられます。診療後の注意点や生活指導の再周知も適切なタイミングで送れるため、患者の理解度が高まり、治療の納得感も維持しやすくなります。こうした継続支援が積み重なることで、自己中断の抑制と治療継続率の向上が期待できます。

再来院や検診予約の増加による収益安定化

再来院や検診の予約が安定して増えることは、医療機関の収益を平準化するうえで重要です。医療CRMでは、受診周期や検診対象の条件に基づいて患者を抽出し、適切なタイミングで案内やリマインドを送る運用が可能になります。
これにより、患者が「受診の必要性に気づけないまま離れる」状態を減らし、自然な再来を促せます。無断キャンセルや直前キャンセルの抑止にもつながるため、予約枠の稼働率が高まりやすくなります。
自由診療や健診オプションの提案も履歴に沿って行えるため、患者の関心に合わせた追加受診が生まれやすい点もメリットです。継続的な受診導線が整うほど、月ごとの収益変動が抑えられ、運営の見通しが立てやすくなります。

地域連携の強化と紹介患者の増加

CRMで紹介・逆紹介の履歴や連携先ごとの実績を蓄積すると、地域連携を組織的に強化しやすくなります。どの医療機関から、どの疾患や患者層が紹介されているかを可視化できれば、連携の偏りや変化を早期に把握し、必要なフォローや情報共有に踏み出せます。
逆紹介の進捗も継続管理できるため、治療後の戻し漏れが減り、紹介元との信頼関係の維持に役立ちます。連携の状況をデータで共有できるようになると、院内でも地域連携の成果を説明しやすくなり、役割分担や専門性の打ち出しが明確になります。こうした土台が整えば紹介の質と量が安定し、結果として紹介患者の増加や地域内での存在感向上につながります。

データに基づく経営・稼働分析の高度化が可能

医療向けCRMツールは診療周辺の行動データを蓄積できるため、経営や稼働分析の精度を高められます。来院周期、キャンセル率、フォロー反応、紹介経路、自由診療の検討状況などが可視化されると、数字の変化を「なぜ起きたか」まで踏み込みやすくなります。
たとえば特定の曜日や時間帯のキャンセル増に対して案内方法を変える、再来が落ち込む層に啓発施策を打つ、といった改善を根拠ある形で設計できます。現場感覚だけに頼らず、患者動向と稼働の実態を揃えて捉えることで、施策の優先順位や投資判断が明確になります。結果として、経営の意思決定が速くなり、限られた資源をより有効に配分しやすくなります。

失敗しない医療向けCRMツールの選び方

失敗しない医療向けCRMツールの選び方のイメージ
医療向けCRMツールの導入を成功させるためには、自院の業務やシステム環境に合った選定が重要です。連携の可否やセキュリティ要件、運用設計まで含めて見極めることで、現場に定着しやすくなります。
ここでは失敗を避けるために押さえたい選定ポイントを整理します。

電子カルテ・レセコン・予約システムと連携が可能か

CRMツールの導入効果は、既存システムとどれだけ自然につながるかで大きく変わります。電子カルテやレセコン、予約システムと連携できない場合、データの二重入力や手作業での転記が残り、現場負荷がかえって増える恐れがあります。
予約情報が自動でCRMに反映されるか、問診回答やフォロー履歴を診療側で参照できるかなど、実運用に直結する連携範囲を確認することが重要です。連携方式も、標準APIでの連携なのか、CSVでの取り込みになるのかで運用負担が変わります。自院で使っている主要システム名を前提に、ベンダー側の実績や接続の安定性まで含めて見極めることで、導入後の“つなぎ作業”を最小限に抑えられます。

医療情報の安全管理ガイドライン/個人情報保護への対応

医療向けCRMツールでは、患者情報を広く扱うため、セキュリティと法令対応の水準が最優先の選定条件になります。厚生労働省の医療情報システム安全管理ガイドラインに沿った運用設計が可能か、通信や保存データの暗号化、アクセスログの取得、権限管理の粒度などを確認しましょう。
クラウド型の場合は、データ保管場所やバックアップ体制、障害時の復旧方針まで明確になっているかも重要です。加えて個人情報保護法への適合や、同意取得・変更履歴を保持できる仕組みがあるかも見落とせません。安全要件に不安が残ると運用の幅が狭まり、せっかくのCRM活用が進みにくくなります。導入前に院内ポリシーと照合し、安心して使い続けられる条件を満たすかを見極める必要があります。

診療科や施設規模に合う運用設計と権限管理が可能か

同じCRMでも、診療科や施設規模によって最適な使い方は変わります。たとえば外来中心のクリニックと入院を持つ病院では、必要なデータ項目や患者接点の量が異なります。自院の業務フローに合わせて画面や項目を調整できるか、現場が過不足なく使える設計かを確認することが重要です。
さらに権限管理の柔軟さも欠かせません。医師、看護師、受付、コールセンター、地域連携室など、職種ごとに参照・編集範囲を適切に分けられないと、運用が形骸化したり安全面の不安が残ったりします。現場の人数や役割分担を踏まえて、無理なく回る運用像を描けるツールかどうかが、定着と成果の分かれ目になります。

地域連携や自由診療など自院の重点領域に強いか

医療向けCRMは汎用的に見えても、強みの領域には差があります。地域連携を重視する病院なら、紹介・逆紹介の管理や連携先別レポート、関係履歴の残しやすさが重要になります。
一方、自由診療や健診を伸ばしたい医療機関では、カウンセリング履歴や提案状況の管理、リピート促進の設計がしやすいかが選定の軸になります。自院の課題や伸ばしたい領域が曖昧なまま選ぶと、機能はあっても活用されない状態になりやすいです。
まず「どこで成果を出したいか」を明確にし、その領域での導入実績や運用事例を確認することで、導入後のギャップを減らせます。重点領域にフィットしたツールほど、投資対効果を得やすくなります。

導入後の定着支援やサポート体制が十分か

CRMは導入時よりも、導入後に現場へ定着させる過程で差が出ます。そのため、サポート体制の充実度は機能と同じくらい重要です。初期設定やデータ移行をどこまで支援してくれるか、操作研修やマニュアルが現場の習熟度に合っているか、問い合わせの対応速度や窓口の分かりやすさも確認しましょう
運用が軌道に乗るまで伴走してくれるか、活用状況を見て改善提案をしてくれるかといった“定着支援の姿勢”も見極めポイントです。医療現場は忙しく、使い方が複雑だと定着前に止まってしまうことがあります。導入後のサポートまで含めて選べば、現場の負担を抑えながら活用の幅を広げやすくなります。

まとめ|医療向けCRMツールで“患者にも現場にもやさしい運営”を実現するために

医療向けCRMツールは、患者データと診療前後のコミュニケーションを一つにまとめ、継続受診を支えながら現場の負担も減らしていくための仕組みです。予約・問診・フォローが分断されたままだと、確認や対応のやり直しが増え、患者にとっても現場にとってもストレスが大きくなります。
CRMで情報と運用をつなげることで、対応の質が安定し、診療の抜け漏れや治療中断の防止にもつながります。再来院や検診予約、自由診療のリピートが自然に増えやすくなる点も、日々の運営を支える大きなメリットです。さらに紹介・逆紹介を継続管理できれば、地域連携を属人的にせず、信頼関係を積み上げる運用へと広げられます。
導入時は、連携の可否や安全管理、施設規模に合う運用設計、重点領域との相性、定着支援まで含めて選ぶことが大切です。自院の課題と目指す姿に合ったCRMを選び、無理なく回る形で活用できれば、患者にとって通いやすく、現場にとって続けやすい医療体制づくりが進めやすくなります。
業界DX最強ナビ
著者
業界DX最強ナビ編集部
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