医療業界向けCRMとは?導入メリットとおすすめツール4選【事例付き】
更新日 2025年05月12日
医療機関の経営者や開業医の方の中には、「CRMツール(顧客管理システム)」という言葉を聞いたことはあっても、「実際にどのようなメリットがあるのか」「導入すると本当に効果があるのか」と疑問を持つ方も多いかもしれません。
この記事では、そんなCRM導入に関する疑問や不安を解消するために、医療機関が抱える具体的な課題とその解決法を初心者向けにやさしく解説しています。また、実際の病院やクリニックでの導入事例も紹介しているため、自院での活用イメージが湧きやすくなっています。
■この記事のポイント
- 医療機関が直面する課題をCRMでどう解決できるのかがわかる
- 医療業界に適したCRMの選び方のコツがつかめる
- 実際の導入事例を通じて、導入後の具体的な効果をイメージできる
CRMの導入を検討している方は、ぜひこの記事を参考に自院に最適なシステムを見つけてください。
医療業界でCRMが注目される理由とは?
近年、医療業界では患者管理や地域医療連携を効率化するためのCRM(顧客関係管理)が注目されています。CRMとは、患者の情報を一元化し、診療の質を高めたり、業務効率を改善するためのシステムです。
特に日本では、高齢化が進むにつれて患者数が増え、医療費の負担も増大しています。実際に厚生労働省の統計によると、2019年度の医療費は43兆円を超えており、2025年にはさらに増加する見込みです。また医師不足や看護師の労働環境悪化も深刻な課題となっています。
このような背景から、CRMを導入して患者管理の効率化を図り、スタッフの負担軽減や医療サービスの質向上を実現しようとする医療機関が増えています。
医療業界が抱える5つの課題とCRM導入のメリット
医療業界が抱える課題を具体的に理解し、CRM(顧客関係管理)を導入することでどのようなメリットがあるのかをわかりやすく説明します。初心者の方でも理解しやすいよう、専門用語をなるべく避けてシンプルに解説しています。
【課題①】患者情報がバラバラで管理が大変
現場のよくある困りごと
- 患者さんのカルテが紙やパソコン、いろいろな場所に分散している。
- 情報を探すのに時間がかかってしまう。
CRM導入後のメリット
CRMを使えば、患者さんの情報(診察の記録、検査の結果、薬の履歴)が一つにまとまり、パソコンやスマホですぐに確認できます。これで診療がスムーズになり、患者さんへの対応も迅速になります。
【課題②】スタッフの負担が大きく、業務が非効率
現場のよくある困りごと
- 医師や看護師、受付スタッフが電話応対や書類作成などの事務作業に追われ、本来の医療業務に集中できない。
- 人手不足で、現場スタッフの残業が増えている。
CRM導入後のメリット
CRMには予約管理や患者さんへの連絡などを自動化する機能があります。スタッフが事務作業から解放され、医療に集中できる環境が整い、残業の削減にもつながります。
【課題③】地域の病院やクリニック同士の情報連携がうまくいかない
現場のよくある困りごと
- 他の医療機関へ患者さんを紹介するとき、FAXや電話でやりとりしているが、情報が漏れたり遅れたりする。
- 転院や専門医への紹介がスムーズに進まず、患者さんを待たせてしまう。
CRM導入後のメリット
CRMを活用すれば、患者さんの情報を安全かつ瞬時に地域の医療機関と共有できるので、患者さんの紹介や転院がスムーズになり、地域全体で患者さんをしっかりサポートできるようになります。
【課題④】医薬品や医療材料の在庫管理が煩雑でミスが起きやすい
現場のよくある困りごと
- 薬品や医療材料の管理を手作業で行っており、在庫が足りなくなったり、逆に余り過ぎて無駄が出たりしている。
- 棚卸しに時間がかかり、スタッフの負担が増えている。
CRM導入後のメリット
CRMには在庫管理機能があり、医薬品や材料がどのくらい使われたかリアルタイムで把握できます。また、自 動的に適正な在庫量を管理してくれるため、無駄が減り、棚卸し作業の負担も大幅に軽減します。
【課題⑤】患者さんの満足度が低下しやすい環境
現場のよくある困りごと
- 患者さんが予約を忘れてしまい、無断キャンセルが多発する。
- フォローアップができておらず、定期検診に来なくなる患者さんがいる。
CRM導入後のメリット
CRMなら患者さんへの予約リマインドや定期的なフォローアップをメールやLINEで自動的に行えます。患者さんは安心して通院でき、無断キャンセルや通院離れを防ぐことができます。結果として、患者さんの満足度が高まり、クリニックや病院の評判が期待できます。
医療機関向けCRMの主要機能をわかりやすく解説
ここでは、医 療機関で実際に使われるCRM(顧客関係管理システム)について、初心者でも理解できるようにシンプルな言葉で説明します。専門的な表現を避け、日常の業務で役立つ場面を具体的にイメージできるようにしました。
① 患者情報の一元管理(まとめて管理)
CRMには、患者さんの基本的な情報(お名前、生年月日、住所など)はもちろん、診察の履歴や検査結果、服薬情報までをひとつにまとめて管理する機能があります。このため、診察の前に患者さんの過去の診療情報を瞬時に把握することができ、医療事故を防止することにもつながります。
また、これまで紙カルテを探したり、パソコンの異なるシステムを行ったり来たりしていた手間が省けるため、診察がよりスムーズに進みます。
② 予約管理・自動通知(リマインド機能)
CRMを使えば、患者さんの診察予約をデジタルで一元管理できます。さらに、予約日が近づくと自動でメールやLINE、SMSを使って患者さんに通知を送ることもできます。そのため、患者さんが予約をうっかり忘れてしまったり、無断キャンセルしてしまったりすることを大幅に減らせます。
また、もし患者さんが予約を変更したい場合も簡単に対応でき、スタッフの手間を削減することができます。
③ 地域医療連携機能(情報共有)
医療業界では、患者さんを専門医や他の医療機関に紹介する場面がよくあります。これまではFAXや郵送で情報をやり取りしていたものが、CRMを使えば近隣の医療機関とリアルタイムで安全に患者情報を共有できるようになります。そのため、患者さんの紹介や転院がスムーズになり、待ち時間も大幅に短縮されます。
④ 在庫管理・自動発注機能(物品管理)
CRMには医薬品や医療材料などの在庫状況をリアルタイムで記録・管理する機能があります。薬品が少なくなると、自動的にスタッフに知らせるアラート機能があるため、必要な薬品や物品がなくなってしまうトラブルを防げます。
さらに、使い切れない薬品や 医療材料が過剰に余ることもなくなり、病院やクリニックのコスト削減にも役立ちます。これまで手作業で行っていた棚卸し作業の負担が減るのも嬉しいポイント。
⑤ データ分析・レポート機能(経営支援)
CRMを活用すると、患者さんのデータや診療状況を自動で分析し、見やすいグラフやレポートにまとめられるので、病院やクリニックの経営状態を簡単に把握できます。患者数の変化やよく行われる治療、診療の傾向が一目で分かるようになり、経営判断や改善策を迅速に行えるようになります。
医療機関向けCRMの選び方ガイド
CRM(顧客関係管理システム)にはさまざまな種類がありますが、医療機関にぴったりなCRMを選ぶためには、いくつかの大切なポイントがあります。ここでは初心者でも分かりやすいように、難しい専門用語を避けて説明します。
①自院がCRMを導入する目的を明確にする
CRMを導入する際には、まず「自分たちの病院やクリニックが何を解決したいのか」をはっきりさせることが重要になります。
たとえば、患者さんの予約をスムーズに管理したいのか、スタッフの業務負担を軽くしたいのか、あるいは地域の医療機関との連携をもっと簡単にしたいのかによって、選ぶべきCRMの機能が異なります。目的が明確になると、自分たちに最適なシステムを絞り込みやすくなります。
②医療業界での実績や信頼性を重視する
CRMシステムは世の中にたくさんありますが、そのすべてが医療業界に最適というわけではありません。医療機関には患者さんの大切な情報を安全に扱うことや、業務効率化につながる特別な機能が必要です。
そのため、すでに多くの病院やクリニックで導入され、医療業界での実績が豊富なCRMを選ぶことをおすすめします。医療機関向けの導入事例を確認することで、導入後のイメージもつかみやすくなります。
③操作性や使いやすさをしっかり確認 する
CRMを実際に使うのは医師や看護師、受付スタッフなどの医療スタッフです。そのため、日常的にストレスなく使えるかどうか、操作が複雑すぎないかを事前に確認することが大切です。
導入後に現場でなかなか定着しないということがないように、デモや無料トライアルなどを活用して、スタッフが実際に触ってみる機会を作るとよいでしょう。
④セキュリティ対策がしっかりしているかをチェックする
医療機関では患者さんの個人情報や診療情報を扱うため、セキュリティは特に重要なポイントになります。
CRMを選ぶ際には、情報漏洩を防ぐためにどのようなセキュリティ対策が施されているかを必ず確認しましょう。たとえば、暗号化や二段階認証、アクセス権限設定などが充実しているCRMなら安心して導入できます。
⑤導入後のサポート体制の充実度を見る
CRMを導入した後も、使い方が分からなくなったり、思わぬトラブルが起こったりすることもあります。そのため、導入後のサポート体制がしっかりしているかも重要なポイントです。
使い方の相談やトラブル時の対応が迅速かつ丁寧なCRMサービスを選べば、安心して業務を続けられます。導入前にサポート窓口の対応や口コミなどを参考にするとよいでしょう。
おすすめの医療機関向けCRMツール4選【導入事例付き】
ここでは、実際に医療業界で多くの病院やクリニックに選ばれているCRMを、具体的な導入事例とともに初心者向けにわかりやすくご紹介します。

HubSpot
HubSpot Japan株式会社
出典:HubSpot https://www.100inc.co.jp/
参考価格
無料
他
HubSpotは使いやすさとコストパフォーマンスが特徴で、特に小規模から中規模のクリニックで人気のCRMです。患者さんへの予約リマインドや診察履歴の管理が簡単にできるため、初めてCRMを導入する医療機関にもおすすめです。
【導入事例:ASP Japan合同会社(医療機器・医薬品業界)】
HubSpotの導入により、短期間で1,000万円規模の売上を実現。また、Content Hubを活用してWebサイトをリニューアルし、医療従事者や看護師が必要な情報を見つけやすい構造を設計しました。
主な機能
- 導入支援・運用支援あり
- 電話サポートあり
- クラウド(SaaS)
- メールサポートあり

Zoho CRM
ゾーホージャパン株式会社
出典:Zoho CRM https://www.zoho.com/jp/crm/
参考価格
無料
他
Zoho CRMは手頃な価格で多彩な機能を備えており、規模を問わず幅広い医療機関で活用されています。カスタマイズ性が高く、現場のニーズに合わせて柔軟に設定できる点が魅力です。
【導入事例:日野皮フ科医院】
クラウド型顧客管理システム「Zoho CRM」を活用することで、美容皮膚科の売上が2倍になりました。また、新型コロナウイルス感染拡大への対策として、オンライン診療を低コストかつ迅速に実現。
主な機能
- クラウド(SaaS)
- 導入支援・運用支援あり
- スマホアプリ(iOS)対応
- スマホアプリ(Android)対応

Dynamics 365
日本マイクロソフト株式会社
出典:Dynamics 365 https://www.microsoft.com/ja-jp/dynamics-365/products/sales
参考価格
無料
他
Microsoft社が提供するCRMで、特に大規模な病院に向いた設計となっています。OfficeなどのMicrosoft製品との連携が強く、既存のIT環境とスムーズに連携したい医療機関に最適です。
また、大手だという点も、安心感やセキュリティ が非常に重要となる病院・医療業界においては嬉しいポイントとなります。
主な機能
- スマホアプリ(iOS)対応
- ワークフロー機能
- 顧客管理機能
- 定型タスクの自動実行機能
Salesforce Health Cloud(セールスフォース ヘルスクラウド)
Salesforce Health Cloudは、患者情報の一元管理や地域医療連携に強みを持つCRMで、大規模病院からクリニックまで幅広く活用されています。特に人工知能(AI)を活用した患者予測や経営分析が強みで、高度な診療管理を求める病院に人気があります。
【導入事例:大阪医科薬科大学病院】
同病院では、地域医療連携のための紹介患者の管理や情報共有をHealth Cloudで実施しました。患者さんの転院手続きにかかる時間が大幅に短縮され、患者満足度の向上にも貢献しています。
ここまで医療機関がCRMを導入する際のポイントを初心者向けに解説してきました。最後に、特に重要なポイントを簡潔にまとめます。
まとめ:医療機関がCRM導入で気をつけたいポイント
CRM導入を成功させるためには、何よりもまず導入の目的をスタッフ全員がしっかり理解することが大切です。また、実際に使うスタッフが負担を感じずに操作できる使いやすさも非常に重要になります。患者さんの個人情報を扱うので、セキュリティ対策もしっかり確認しましょう。
- 導入目的をスタッフ全員で共有する
- 操作が簡単で、使いやすいものを選ぶ
- セキュリティ対策をしっかり確認する
これらのポイントをぜひ参考に、自院に最適 なCRMを選んでください。