【実例公開】建設業の生産性が上がるおすすめ施工管理システム8選
更新日 2025年05月12日
「図面の更新漏れが原因で手戻りが増えている」「写真整理や書類作成が深夜まで終わらない」「2024年の残業規制(いわゆる“2024年問題”)が迫ってきて焦っている」──建設現場におけるこうした悩みを解決する手段として、近年注目を集めているのが施工管理システムです。
本記事では、施工管理システムの基本概要や導入メリット、選ぶ際に注目すべきポイント、実際の事例などを詳しく解説します。今後ますます普及が見込まれるクラウド施工管理サービスの導入を検討するにあたって、ぜひ参考にしてみてください。
■この記事のポイント
- 施工管理システムは“現場の生産性を根底から変える”DXツール。
- 2024年問題や人手不足を背景に、導入率はすでに35%に達し今後も急拡大が見込まれる。
- 選定時は 「必要機能」「料金体系」「サポート体制」 を見極め、自社にフィットするサービスを導入することがカギ。
- 導入コストと効果のバランスを慎重に見極めつつ、小規模でも無理なく始めることで確実に業務効率と利益率を高められます。
まず最初に、施工管理システムとは何かについて簡単に触れたいと思います。
その後、建設業界に施工管理システムが必要な理由や、選び方のポイント、おすす めサービス一覧の紹介をしていきます。
施工管理システムとは?
施工管理システムとは、工事現場で行われる「工程管理」「写真・図面管理」「品質・安全管理」「原価管理」など複数の業務を一括で管理するクラウドツールの総称です。以前は紙やエクセル、電話、FAXなどでそれぞれバラバラにやり取りしていた情報を一元化し、リアルタイムで全員が共有できるようにするのが最大の特徴です。
例えば現場で撮影した写真をその場で自動的に台帳へ振り分け、本社の工事管理担当や協力会社とも即座に共有するようなことができます。写真整理のための残業やエクセル・PDFへの手作業転記といった煩雑さが解消されるのが導入メリットです。
工事管理システムとの違い
近い用途である工事管理システムとの違いは以下となります。一方、2つを厳密に区別せずに呼ばれる場合もあるので、文脈に応じて柔軟に解釈するのがよいといえます。
区分 | 施工管理 | 工事管理 |
---|---|---|
主な対象 | 工程・品質・安全・原価(現場目線) | 契約・出来高・請求・支払(本社目線) |
タイムライン | 日次~週次 | 月次~年次 |
利用者 | 現場代理人/監督/協力会社 | 経理/工事部門長/経営層 |
施工管理システムは、とくに「現場寄りの4大管理」をスピーディに処理し、本社側の工事管理システムや会計システムと連携することが多いのが特徴です。
なぜ今、建設業界に施工管理システムが必要か
(1) 2024年問題と働き方改革
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されることで、残業抑制が避けられない状況です。施工管理システムを導入すれば、工程表や写真台帳作成など、現場監督が通常夜間に対応していた業務を大幅に効率化できます。残業時間を削減し、働き方改革を進める上でもシステムの導入は大きな武器になります。
(2) 人手不足への対策
少子高齢化による労働力不足が深刻化しており、中堅・中小の建設企業では 特に厳しい状況です。施工管理システムの導入により、ひとりの現場代理人が複数現場をモバイルで遠隔管理できるようになり、従来よりも少ない人員で複数の案件を進められるようになります。
(3) DX推進の潮流
国土交通省のi-Construction施策やBIM/CIM活用など、建設業界のデジタル化・生産性向上は今や避けては通れないテーマとなりました。実際に、施工管理システムの普及率は大手ゼネコンで50%近く、全体平均でも35%程度に達しており、今後も加速する見通しです。デロイト トーマツ ミック経済研究所の予測では、2026年度に38%を超える普及率とされ、業界のスタンダードな業務フローになりつつあります。
施工管理システムを選ぶ5つのチェックポイント
(1) クラウド or オンプレ / モバイル対応
・具体的な建設現場のシーン
携帯電波の入りづらいトンネル工事現場や山間部など。こうした場所では、オフラインで写真撮影しておき、戻ったタイミングで一括同期する必要があります。
・ポイント
クラウド型なら基本的に常に最新版の機能が使え、拠点を問わずアクセスできますが、オフライン対応がしっかりしているか確認しましょう。建設現場ではWi-Fi環境が十分でないことも多いため、スマホやタブレットでオフライン撮影→後で自動アップロードできる機能があるかが重要です。オンプレ型を選ぶなら、社内サーバー設置やメンテナンスコストも考慮する必要があります。
(2) 現場向け機能の充実度
・具体的な建設現場のシーン
たとえばコンクリート打設の写真を、電子黒板付きで連続撮影しながら同時に工程表を更新するケース。あるいは、図面上に直接書き込みをしたい場面。
・ポイント
写真管理や図面へのマークアップ機能、チャット機能、検査レポートの自動生成など、現場代理人や職人が日常的に使う機能がシンプルかつ確実に 使えると定着しやすいです。操作が煩雑すぎると現場レベルで敬遠され、結局、紙と電話に逆戻りしてしまうケースもあるので、UIの使いやすさは最優先です。
(3) 本社連携(原価・会計・請求処理)
・具体的な建設現場のシーン
協力会社への発注書類を出す段階で、そのまま本社の経理システムにデータを連携し、支払い手続きもクラウド上で完結させる。
・ポイント
工程管理や写真台帳だけでなく、原価や会計システムと連携しておけば、実行予算の消化状況がリアルタイムで可視化でき、プロジェクト全体の粗利管理にも役立ちます。社内に独自の基幹システムがある場合、APIやCSV連携など互換性をチェックしましょう。
(4) ライセンス・料金形態
・具体的な建設現場のシーン
担当者が増えていく大規模現場では人数課金のコストがネックに なる一方、小規模リフォーム主体の企業は定額制だと割高になりやすい、などの問題が出てくる。
・ポイント
システム提供会社によって「月額定額」「ユーザー数課金」「案件数課金」「段階別プラン」など多種多様。自社の事業規模(従業員数・案件数・想定利用端末数など)に合わせて、どの料金モデルが最適かには注意しましょう。
(5) 導入サポートと操作研修
・具体的な建設現場のシーン
高齢の職人さんやITに不慣れな現場監督が多く、導入直後から「よくわからない」「使いづらい」という声が上がるケース。
・ポイント
どれだけ高性能なシステムでも、現場で定着しなければ意味がありません。導入前のヒアリングや現場研修、操作マニュアルの作成、導入後のアフターサポートなど、ベンダーが伴走してくれるかを必ず確認しましょう。
建設業界におすすめな施工管理システム8選
施工管理システムは数多くありますが、その中でも特に建設業界の生産性向上や業務効率化に実績があり、現場スタッフからも「使いやすい」と編集部が判断したサービスを厳選しました。
「写真・図面管理」「工程管理」「原価管理」など、業務を劇的に改善できる機能を持つクラウド型サービスを中心に紹介します。ぜひ、自社にぴったりの施工管理システムを見つけてください。
【比較表】おすすめ施工管理システム早見表
サービス | 特徴 | おすすめな理由 |
---|---|---|
ANDPAD | 国内利用社数21万社、現場チャットと工程カレンダーが核 | “写真・検査・受発注までワンアプリ”で職人も本部も同じ画面。 |
SPIDERPLUS | iPad図面へのタップ書込みと配筋・仕上げ検査が強力 | 設備・プラント案件でも使える現場専用UI。 |
ダンドリワーク | 工程ガント+チャットで“段取り漏れ”をゼロへ | 1〜数千棟までスケール/協力会社も無料招待可。 |
SiteBox | 土木向けの出来形・電子小黒板アプリ | スマホで計測→KSデータバンク保存、NETIS登録。 |
Photoruction | 写真AI整理+BIMビューワー | 電子黒板付き撮影→自動台帳化、BIM連携で躯体確認。 |
KANNA | 基本機能無料、現場チャット感覚で導入ハードル最小 | 帳票テンプレやカレンダー共有など小工事に最適。 |
現場ポケット | 職人が選ぶ使いやすさNo.1、写真↔報告書が1タップ | 月額定額・アカウント無制限で多人数現場に◎。 |
Kizuku | チャット+工程スタンプで“秒”報告 | CCUS連携・高齢職人でも押すだけ運用。 |
SiteBox
土木・公共工事で特に強みを持つ施工管理システム。国土交通省のNETIS登録済み技術を活用した電子小黒板や出来形管理機能により、官公庁工事の電子化要件をスムーズにクリアできます。スマホひとつで写真撮影・帳票作成・報告まで完結するため、書類作成の手間が大幅に減少。公共工事の入札評価を高め、受注率の向上にも役立ちます。
Photoruction
写真管理の手間を徹底的に削減するAI搭載の施工管理システム。撮影写真を自動で整理・分類し、写真台帳作成にかかる時間を従来の4分の1以下に抑えます。また図面に写真を貼り付けたり、自由にコメントを書き込んだりできるため、現場スタッフ同士の認識ズレも防止できます。設備や構造検査が多く、大量の施工写真管理が発生する現場に特に適しています。
主要建設DXベンダーの調査データと活用事例
民間ベンダー各社も建設DXに関する調査データや事例を公表しています。クラウド施工管理サービス市場では多くの企業が参入し、競い合っています。
例えば、ANDPAD(アンドパッド)はクラウド型の現場管理ツールでシェアを拡大しており、提供開始の2016年から急成長しました。2023年時点で 18.1万社以上、約 46万人 が利用しており、「建設業マネジメントクラウドサービス市場動向調査」にて導入企業数6年連続シェアNo.1と報告されています。
他にも、Photoruction(フォトラクション)やSPIDERPLUS、MetaMoJiのeYACHO、建設システム社のデキスパート・SiteBoxなど、多彩なクラウドサービスが提供されています。
ある調査では、ゼネコンで最も利用されている施工管理アプリはeYACHO(26%)、次いでSiteBox(21%)、SPIDERPLUS(13%)、ANDPAD(10%)等となっており、用途や企業規模によって様々なツールが選択されている状況です。いずれのサービスも、図面や写真の共有から工程・安全・品質管理までカバー範囲を拡大しており、「リアルタイム性」「使い やすさ」「自動化」といった観点で機能強化が続けられています。
ベンダー各社は自社ユーザーの活用状況や効果測定も行っており、例えばANDPADではユーザー企業へのきめ細かなサポート体制を強みに、顧客満足度や長期利用に繋げていると報告されています。Photoructionも施工現場の写真・図面管理クラウドとして多くの導入事例を公開し、DXによる品質・生産性向上の具体例を提示しています。
これらベンダー発のデータや事例も、DX導入の効果を現場目線で示すものとして参考にすると、よりマッチする施工管理システムを導入できるでしょう。
導入効果がよく分かる!施工管理システム活用事例と投資対効果(ROI)
施工管理システムを導入することで実際にどのようなメリットが生まれるのか、具体的な企業の実名を挙げた導入事例を元に要点をまとめて紹介します。
① 白石建設株式会社(ANDPAD導入事例)
【導入前の課題】
- 現場情報がパソコンのローカルディスクにあり、ブラックボックス化していた。
- 検査時の指摘事項が紙の手書きで共有がうまくいかず、工事の手戻りが発生。
【導入したシステムの特徴】
- 写真・工程・原価管理をクラウドで一元化。
- 検査時に写真に直接文字入力でき、情報共有が迅速。
【導入後の効果】
- ダメ帳作成作業が80%削減。
- 手戻り作業が大幅に減少し、現場業務の効率化。
② 日成ビルド工業株式会社(Photoruction導入事例)
【導入前の課題】
- 現場情報のリアルタイム共有が難しく、業務のデジタル化が進まない。
【導入したシステムの特徴】
- AIを活用し、写真の自動整理と電子黒板情報管理。
- 現場情報をリアルタイムに共有し、書類作成業務を簡素化。
【導入後の効果】
- 情報共有がリアルタイム化され震災対応も迅速に。
- 業務の「見える化」が進み、現場の負担が軽減。
③ オーク設備工業株式会社(SPIDERPLUS導入事例)
【導入前の課題】
- 新しいツール導入への抵抗感があり、定着が難しい状況。
【導入したシステムの特徴】
- スマホやタブレットで簡単に検査報告が可能。
- オフラインでも利用可能で、使いやすい操作性。
【導入後の効果】
- 社員1人あたり月8.5時間の業務時間を削減。
- 徐々に利用者を広げ、社内全体でDX推進に成功。
④ 株式会社望月組土木(SiteBox導入事例)
【導入前の課題】
- 公共工事で求められる電子小黒板や出来形管理に対応困難。
【導入したシステムの特徴】
- 公共工事向けにNETIS登録済みの電子小黒板機能。
- ICT施工にスムーズに対応可能。
【導入後の効果】
- 公共工事の書類作成作業が30%削減。
- ICT施工対応で入札評価が向上し、受注率が改善。
これらの成功事例を参考にし、自社に最適な施工管理システム導入の検討を進めてみてください。
まとめ
施工管理システムは、工事現場と本社間の情報共有をリアルタイム化し、アナログ作業を大幅に省力化する強力なツールです。2024年問題や人手不足、DX推進といった業界の変化に対応するうえで、導入メリットは計り知れません。
ただし、高機能なシステムを導入するだけでは効果が発揮できない場合もあります。自社のフローや現場環境に合ったサービスを選ぶと同時に、実際の運用フェーズで職人や監督が使いやすいよう、現場への周知や研修、サポート体制を整えることが成功の鍵です。最初に選定を誤ると、「結局使わなくなった」という事態にもなりかねませんので、チェックポイントをしっかり踏まえて比較検討を進めるのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 現場のITリテラシーが低くても導入できますか?
A. 操作がシンプルで、スマホやタブレットから直感的に利用できるサービスを選べば問題ありません。高齢の職人さんが多い現場の場合は、導入時に研修を設けるなどサポート体制を確認しましょう。
Q2. オフラインでも使えますか?
A. 通信環境が不安定な場所での使用が多い建設現場では、オフラインモードの有無が非常に重要です。事前にキャッシュしておいた図面を現場で閲覧し、撮影写真は後で自動同期できる仕組みのサービスを選ぶと便利です。
Q3. 小規模工務店でも導入メリットはありますか
A. 小規模工務店でも「残業削減」や「工程ミスの減少」といった効果は大きいです。案件数が多い場合はリーズナブルな定額プランや案件課金型プランを活用すれば十分採算が合うケースが多いです。
Q4. 補助金は使えますか?
A. IT導入補助金などの制度が活用できる場合があります。導入予定のシステムが補助金対象に登録されているか、ベンダーや公的機関のサイトで確認するとよいでしょう。
Q5. 原価管理や会計との連携は 簡単ですか?
A. システムによっては標準でAPI連携やCSVインポートを備えています。既存の会計ソフトや基幹システムへのデータ連携フローを事前に確かめ、導入後の手間を最小化できるように設定を行うことがポイントです。